棟梁2.0 建築技術者の未来像

2011年 に読んだ本から今の自分の仕事に繋がりそうな事を正月に色々と考えていたのでここに書いときます。
また今後もtwitterには書けない長文はここに書いていきます。

過去の建築手法や図面から現在の情報技術であるCADへの移行、そして*BIMに至るまでの歴史を紐解き、これらの推移を考察する事により、これからの建築業界の動向を予測し、将来建築技術者に必要とされる職能を再考する手掛かりとはならないだろうか。
(*BIMとはBuilding Information Modeling、簡単に言うと建築に特化した3次元CADの事 参考→http://bim-design.com/about/index.html)
例として、日本ではかつて棟梁と呼ばれる設計から施工まで一貫して司る役割が存在したが、意匠、構造、設備、施工と各分野で細分化、専門化が進み今では完全に分業、縦割り構造となっている。
しかし情報技術の発展やBIMにより、細分化された情報を可視化する事で各プロセスの統括が可能となった現在、棟梁という役割のアップデートを試みることが出来る→棟梁2.0
参考にしたのがコレ↓
一般意志2.0ルソー、フロイト、グーグル/東浩紀
一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル
一般意志2.0では300年前のフランスの思想家ルソーの思想を現在の情報技術を用いて新しい民主主義や政治に実装するという大胆な提案をしている。コレと同じ手法で当時の棟梁と呼ばれた人達が一体何を考え、どの様なプロセスで仕事をしてきたかを考察し、BIMによる建築設計プロセス、合意形成、コミュニケーション、生産システムの変革が棟梁が持ってい た長年の’’経験’’や職人としの’’勘’’のオルタナティブと成り得るか検証できるのではないだろうか。
そしてコレ
→超線形設計プロセス理論
設計の設計
参考書籍は「設計の設計/藤村龍至 etc.」
藤村氏の唱える方法論である超線形設計プロセスはBIMと の親和性も高く、繰り返す模型製作をBIMに置き換えた時量産可能になり、棟梁2.0は意思決定プロセスにおいて「ジャンプしない、枝分れしない、後戻りしない」事で棟梁1.0的な経験や勘に依らず最適解を選択出来る。

一般意思2.0で書かれているのは、大衆の無意識を前に政治家や専門家が熟議を進める事で新たな民主主義を構築していく方法論であるのに対し、棟梁2.0はクライアントの無意識を可視化するわけでは無く、プロセスを可視化する事で専門家を統括していくのである。

近いものに藤村氏が「思想地図vol.3 特集•アーキテクチャ」に論稿しているグーグル的建築家像というものがある
NHKブックス別巻 思想地図 vol.3 特集・アーキテクチャ
検索可能な情報から匿名的に最適解を導いていく建築家像である。
さらにそのイメージを引継いだ対談集のアーキテクト2.0でより発展した議論を展開している。
アーキテクト2.0 2011年以後の建築家像―藤村龍至/TEAM ROUNDABOUTインタビュー集

また、昨年のUIA2011東京大会(第24回世界建築会議)で米国オートデスク社 副社長のフィリップ G. バーンスタイン
も似た様な事を言及していた。→http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/aaa0/112847/
向こうでは「棟梁」が「マスタービルダー」にあたり、今まで海外の契約社会におけるクライアントとコントラクターとの関係性と対照的に語られて来た日本独特の建築業界においても、この様な職能がグローバルスタンダードになる可能性が示唆されている。

などなど…

何か結論が出た訳ではないが、読んだ本の感想を述べるより自身の仕事に繋がる何かを考える方が生産的だと考えて記してみたが
脱サラでもしてじっくり専門的な文献とか漁ったりしない限り何の成果にもならないだろう。またふと何か思い立ったら書いていこうかなと……。(最初で最後かもw)